『やさしい人物画』(A・ルーミス)はやさしくない‼
絵を描きはじめようと、インターネットで絵の教材本を調べると、よく目にするのが『やさしい人物画』(A・ルーミス著)です。
『やさしい人物画』はお絵描き初心者が思わず手に取ってみたくなるようなタイトルです。しかし、その実態とはお絵描き初心者向けとはいえるものではないです。
やさしい人物画とは
出版元マール社のサイト説明によると
人物画の描き方を合理的かつ系統的に指導した書として、好評を博した古典的名著の復刻です。芸術解剖学に基づいた人体のプロポーション把握を説いた上で、初心者でもわかるようにデッサン・遠近法・陰影・いろいろなポーズなどの基礎技法を、図解によって詳述しています。
A・ルーミスとは
本名はウィリアム・アンドリュー・ルーミスといいます。1892年、ニューヨーク生まれでシカゴを拠点で活躍していたイラストレ―タ―です。
画風は写実主義で光と影の表現がとても美しいです。
William Andrew Loomis - Google 検索
なぜ『やさしい人物画』はやさしくないのか?
はじめが最大の難関
やさしい人物画をはじめから読んでいくと、面を食らいます。最初の10ページがほとんどがびっしり文章で埋め尽くされています。まずはあいさつ代わりのジャブでお絵描き初心者にやる気を喪失させます。
つぎに人体のプロポーションについて書かれています。普通の絵の技術書でもプロポーションは最初の方にあるのでいいでしょう。ただ、初心者にとって人体すら描くのが難しいのでプロポーションのイラストを出されても結構困ります。どうやったらプロポーション通りの人体を描けるのか書いてくださればいいのですが……
ここはジャブ程度です。問題は次です。
遠近法がいきなり来るのです。ちいさなコマにびっしりと遠近法のことが描かれているのです。人体を描くことさえままならない初心者にとってこれはかなりキツイです。ジョンとメアリーが海岸で並んでいます。それが1ページに16コマです。初心者にとってはこれはかなりまいってしまいます。これには顎に右ストレートをクリティカルヒットされた気分になります。
ここまででのことが1章の前半にに書かれています。ちなみにこの本は12章はあります。ボクシングでいうと1Rのそれも前半でTKOされるようなものです。
そう、やさしい人物画ははじめにお絵描き初心者の心を折りにきてるのです。
ここが初心者向けではない最大の理由です。
ちなみにこのあと骨格を簡略化したイラストがあり、初心者向けですが4ページ程度しかありません。しかも、この後に解剖学が載っています。
そのほかの問題
この本の構成は1~3章はプロポーション、遠近法、解剖学
4~10章は立つ、座る、歩くなどポージングについて
11~12章は頭、手、足、衣服について
問題点としては挿絵と文章がリンクしていなことです。各章の始まりに文章がびっしりと書かれています。文章は絵の描き方というよりはポーズが何を表すかという哲学的なことがほとんどです。そして、そのあとのページにイラストが載っています。しかし、このイラストも絵の描き方というよりはルーミスの作品に近いです。絵を学ぶ点ではあまり、親切ではありません。
やさしい人物画の使い方
やさしい人物画は読み物とルーミス先生の作品集と分けるべきです。
絶対に1ページずつやっていってはいけません。先ほども述べた通りやさしい人物画は初見殺しです。絵の勉強がしたい場合は好きなページの挿絵を選んで、模写していくのがいいです。そして、暇なときに文章を読むことをオススメします。
初心者にオススメの本
正直な話、ルーミス先生の『やさしい人物画』は初心者にはオススメしません。
載っている内容が具体的な描き方が少なく、話も抽象的で具体的ではありません。
お絵描き初心者におすすめの本を紹介します。
人を描くのって楽しいね!―マンガのための人物デッサン― (廣済堂マンガ工房)
- 作者: 中村成一
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まず初めに
人を描くのって楽しいね!―マンガのための人物デッサン― (廣済堂マンガ工房)です。
この本は作者が編み出した独自の人体の描き方が多数載ってます。
僕も最初はこれで絵を学びました。とても分かりやすく人を描く楽しさを教えてくれます。
リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座 (漫画の教科書シリーズ)
- 作者: 西澤晋,カラーズ
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2009/07/01
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次に紹介するのは
リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座 (漫画の教科書シリーズ)
こちらは初心者向けよりも少し難しいのですが、やさしい人物画の系譜を引いています。ルーミスのような8頭身の描き方が具体的に描かれています。